国際情報

産経ソウル前支局長起訴 朴槿恵政権最大タブーに触れたため

産経新聞前ソウル支局長の加藤達也氏

 韓国・朴槿恵大統領と“青瓦台(韓国大統領府)の女帝”と呼ばれた知人・崔順実(チェスンシル)氏(60)の蜜月は、韓国国内では「公然の秘密」だったが、それに触れることは決して許されなかった。韓国政界“最大のタブー”とされ、大統領自ら封じ込めていたからだ。

 だが動かぬ証拠とともについにブラックボックスの蓋は開かれた。明らかになったのは、朴氏と“女帝”のファミリーによって“先進国”を自任する韓国の国家運営が左右されていたという驚きの事実だった。

 2013年2月に韓国大統領となった朴氏には、就任当初から謎があった。若くして両親を亡くし、実の妹、弟とは絶縁状態。「血は水より濃い」とされ、血縁関係を重視する韓国社会において、家族と切り離された彼女はいつも孤独だった。青瓦台の職員や大臣とも積極的に交流せず、「不通大統領」と呼ばれた朴氏が心を許し、相談相手とするのは誰なのか──?

 この謎に最も近づいたのは一人の日本人だった。産経新聞前ソウル支局長の加藤達也氏である。

 死者・行方不明者304人を出したセウォル号沈没事件が発生した2014年4月16日の日中、朴氏は7時間もの間、音信不通となった。加藤氏はその際、彼女がある男性と密かに面会していた噂があると、その年の8月に産経新聞のウェブ版で報じ、その後ソウル中央地検に名誉毀損で起訴された。

 この時、加藤氏が報じた「ある男」こそ、今回の騒動の中心にいる崔氏の元夫・鄭允会(チョンユンフェ)氏(61)だった。加藤氏をよく知る在韓ジャーナリストが言う。

「起訴された加藤さんは、検察に『なぜ鄭允会のことを書いたのか』と尋ねられると同時に、『崔順実についてどこまで知っているのか』と執拗に聞かれたそうです。記事では崔順実についてほとんど触れていないにもかかわらず、です。起訴容疑は大統領への誹謗中傷でしたが、実は違った。この時、加藤さんは“起訴されたのは政権のタブーに触れてしまったからだ”と自分が虎の尾を踏んだことに勘づいた」

 加藤氏の記事は、朝鮮日報のコラムを間接的に紹介したものなのに、産経だけが起訴されたことで当時、日本憎さゆえの暴挙と見られていた。だが真相は韓国政界最大の恥部に、よりによって日本人が触れてしまったがゆえに起きた、「国策裁判」だったのではないか。

 朴氏と崔夫婦との蜜月は韓国マスコミにとって公然の秘密だったが、韓国のテレビ局が崔氏のパソコンファイルを独占入手・公表したことで“暗部”は白日のもとに晒された。そこには、夥しい数の閣議資料や演説草稿といった国家機密が収められており、人事、外交政策などに民間人が介入した一大スキャンダルに発展した。

※週刊ポスト2016年11月18日号

関連記事

トピックス

クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン