国内

自らの闘病を綴った元記者 がんを受け入れることが入り口

40年以上連れ添ってきた高橋賢司さん(70才)と妻の多見さん(68才)

 がんで離職するのは約3割。治療を受けつつ仕事をする人がいまだ社会で受け入れられていないという状況や、闘病のつらさ、再就職の難しさ――がん患者が仕事をするうえで、さまざまな壁が立ちはだかっている。そんな中、元朝日新聞記者で北海道在住の高橋賢司さんはすぐに職場復帰をすることを選択した。その時65才。リタイアする選択もあったはずだが…。

「がんのことを忘れる時間が欲しかった。がんのことを考えると、やっぱり、常に死と結びついていきますから。家に閉じこもってじっと考えているよりは、働いていた方がずっとよかったんです」(高橋さん・以下「」内同)

 加入していた医療保険がおりたため、生活に困るほどではなかったが、やはりがんの治療費は高い。定年後の再雇用という形だったが仕事をして得たお金は、治療費の足しになった。

「抗がん剤治療時は始めの頃2週間に1回、約10万円の治療費を払っていました。『あと○回だからいくらあれば足りる』などと考えられる余裕もなく、『いつ、貯金を使い果たしてしまうのだろう』と不安になる時もありました」

 働き続けるうえで迷いがないわけではなかった。迷惑をかけるかもしれないと退職も考えた。しかし、上司は高橋さんにこんな言葉をかけた。

「高橋さんに働く気があるならば、辞める必要はない。これからそういう社員が増えてくるし、そんなことでいちいち辞めていたら、きりがないよ」

 だが、高橋さんは複雑な思いが消えなかった。

「職場に残れたのはありがたかったが、若い頃は、“新聞記者は病気をしたら終わりだ、同僚に頼れない”なんて思っていたから、周りからどう思われるんだろうという気持ちは常に持っていました」

 家族の支え、仕事、湯治で出会った人々や信頼できる医師…そして自らの闘病を綴った『がんと生きる』。さまざまな出来事を経て、がんと生きて行く覚悟が育った。67才で退職し、今は「元記者」として連載を続ける。隣で見守ってきた妻の多見さんが言う。

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン