谷村さんは26歳にして出演作150本を超える“若きベテラン”。中学生のころ名立たる映画監督たちから「天才少女」と称賛を受けたあとも、主演だけでなく助演にも積極的に挑んできました。近年はむしろ主演を引き立てるバイプレーヤーに徹している感すらあります。
ずっと変わらないのは、常に作品のカギを握る難役に指名されていること。14歳で演じたデビュー映画『カナリア』で、父親から虐待を受け援助交際に走る少女を演じたのを皮切りに、映画『ユビサキから世界を』では集団自殺を計画する女子高生、『わたしたちの教科書』(フジテレビ系)ではいじめられ、親友を校舎からの転落死で失う中学生、映画『おにいちゃんのハナビ』では自ら坊主頭を志願した白血病の少女、『モリのアサガオ』(テレビ東京系)では両親を殺されたショックで口がきけなくなった女性など、10代のころからハードな役柄を演じ続けてきました。
ドラマや映画のキャスティング会議では、暗い過去を持つ女性の難役があると必ず谷村さんの名前が挙がるなど、その評価は頭一つ抜けたものがあります。彼女は制作現場で、10代のころは「10代に見えない」と言われ、20代になっても「20代に見えない」と言われるなど、常に大人びた役柄を求められてきました。つまり、ずっと年齢以上の役を背伸びして演じなければいけなかった分、才能だけでなく成長のスピードも速いのです。
「インパクトの強い難役を演じるとイメージが固まってしまう」と連続出演を避ける女優が少なくない中、谷村さんは前向きに挑み続けることで、“難役のスペシャリスト”というポジションを手に入れました。10代で早くも唯一無二のポジションを確立したことで、その後もオファーが途切れることはないのです。
もちろん谷村さん本人の努力も見逃せません。取材をしていると、撮影現場で共演者のことをよく観察している様子がうかがえますし、表情や仕草などを細かくチェックしてキャラがかぶらないように心がけるなど、まるで演出家のような広い視野を持っていることが分かります。