その意味で、すみれたちのことをよく見ていて、足りないところを補おうと心がけ、必要なら言いにくいことも迷わず言う明美は、谷村さんのハマリ役。谷村さんが明美を演じることで、ドラマがただの仲よし物語にならずにピリッと引き締まり、芳根さんたちの演技にもいい影響を与えているように感じます。

 演じてきた役柄のイメージで、「物静かでミステリアスな人に見られがち」という谷村さんですが、実際の彼女は明るく話し、フットワークの軽い女性。これまで3度取材したことがありますが、一人暮らしの様子や家族のことも気さくに話してくれましたし、インタビューが終わると笑顔で頭を下げ、小走りで颯爽と帰っていきました。「人気女優が夜道に一人で大丈夫かな……」とこちらが心配になるくらい自然体の人だったのです。

 そんな自然体の振る舞いは、ミドルティーンのころからほとんど変わっていませんし、谷村さんの演技スタイルそのものとも言えます。ありきたりな分かりやすい演技ではなく、内面からにじみ出るような感情表現ができるのは、単にキャリアが長いからではなく、難役に挑み試行錯誤を重ねてきた証ではないでしょうか。

 とりわけ『べっぴんさん』で演じる明美は、同じくにじみ出るような感情表現を求められる、すみれ役の芳根さんにとってよきお手本。実際、すみれと明美の会話シーンには、優しさと緊張感が共存した独特の間がありますが、谷村さんの演技がそれを作っているように見えます。

 まだ学生役もできる童顔ながら、すでに大女優のような貫録を備えている谷村さんが、30代、40代と年齢を重ねていく中で、どんな難役に挑み、どんな女優になっていくのか。共演する同世代の女優たちにどんな影響を与え、どんな化学反応が生まれるのか。楽しみでなりません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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