──ハチ公前広場の喫煙所を撤去した大きな理由は?
「この喫煙場所は待ち合わせ場所で有名なハチ公像の裏。ここには喫煙者だけでなく、子供やお年寄りなど多くの人がいて、たばこの煙を常に浴びている状態になっていました。そのため、環境改善の必要があると判断しました。
また、景観改善の目的もあります。観光名所になっているハチ公像が煙にまみれているのは国際都市としていかがなものかと。地域からの要望が多かったことも確かです。喫煙者ばかりが集まりすぎて大変なことになっている状況をどうにかしてほしいという声がたくさん寄せられました」
──ハチ公前広場の喫煙所をなくす代わりに、西口にあるモヤイ像横の喫煙所を利用するように呼びかけているが、どちらも人が多いだけに喫煙者を集約しきれないのではないか。
「モヤイ像の喫煙スペースはかつて剥き出しだったのですが、改良して仕切りを設けるとともに、煙が歩行者にかからないよう囲いの折り返しに傾斜をつけるなど整備しました。そのため、これまでハチ公前で吸っていた人たちにはそちらを利用してほしいと考えています。
もちろん、1か所の喫煙スペースでは限りがあるため、喫煙者の方にご迷惑をおかけすることは前もって危惧していました。ですが、やはり魅力あるハチ公前広場にするため、ご理解いただくしかないという結論に達しました」
──ハチ公とモヤイ像では距離はさほど遠くないとはいえ、目的地別に向かう方角も違う。しかも、駅前の待ち合わせ場所だからこそ、それぞれに喫煙スペースがあったほうが助かるという意見もある。
「これまでは、たばこを吸う人の立場も考慮してハチ公口に喫煙所を設けていたわけですが、国も受動喫煙防止対策を進めている中、渋谷区としても、これからは非喫煙者の視点を中心にうまく分煙環境をつくっていこうという方針になりました」
──そうであるならば、今後も駅前の喫煙所はどんどん減らしていく予定なのか。
「そう明言はしていませんが、屋外にある喫煙所はどうしても煙が大量に漏れるため、今後は可能な限り大規模なビルや施設などの屋内に公共の喫煙所を設けていく予定です。
現状ではまだ屋内喫煙所は少ないものの、東京オリンピック前までには渋谷駅周辺の再開発も進み、喫煙者と非喫煙者の棲み分けや、“煙のないキレイな渋谷”ができてくると思います」
──渋谷駅周辺ではいつまでに何か所の屋内喫煙所が新設されるのか。
「渋谷駅直近で3か所、周辺も入れると7件の新設計画があり、オリンピックまでにはできる予定です。今後、屋外の喫煙所が徐々に屋内へと移設されるイメージです。
ただ、今回のように撤去しても舞い戻ってきてポイ捨てをしてしまう喫煙者もいるので、移設段階ではきちんと新しい場所の地図を示すなど、いかに周知徹底していくかが課題といえます」
──ネットでは、喫煙所をなくせば、歩きたばこやポイ捨てを助長するだけとの声もある。
「喫煙者の方には本当にご不便をおかけしていると思います。渋谷区はたばこが法で認められている以上、決して喫煙所をゼロにするわけではありません。むしろ、新しい街づくりが進んでいけば、今よりも分煙環境の整った喫煙所がいくつも設置されるため、しばらく辛抱いただければと思います」