アメリカの2016年度の予算教書では、人件費を含む在日米軍への支出は55億ドル(約6000億円)とされる。一方、日本政府が支払っている在日米軍駐留経費負担は年間約7600億円なので、それを足しても1兆4000億円弱だ。日本の防衛費は年間約5兆円だから、在日米軍の軍事力が現状プラス6000億円の1兆4000億円程度で保持できるのであれば、トランプ氏の要求に乗っかってしまったほうがよいと思う。
なぜなら「専守防衛」という基本理念で防衛政策をやってきた日本は攻撃型の戦力を持っていないので、在日米軍と同等の抑止力を自前で確保するとなったら、莫大なカネが必要になるからだ。
したがって、トランプ氏との交渉では日本が先手を打って「予算教書の中にある在日米軍への支出分55億ドルを払うから、このまま駐留してください」と提案すべきだと思う。
そうすれば、日本は経費を払う以上、尖閣諸島など「守るものは守ってもらう」「日本が求める防衛以外の余計な口出しは無用」という立場を取れる。さらに、アメリカが敵視してきたロシアや(かつての)ミャンマー、キューバ、イランなどとの付き合い方も、日本独自の政策で行うことができるようになるのだ。
※SAPIO2017年1月号