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石田衣良氏の年頭所感 「新海誠氏と宮崎駿氏の違いは」

「君の名は。」の監督の新海誠さんも若い子の気持ちを掴むのが上手いと思いました。たぶん新海さんは楽しい恋愛を高校時代にしたことがないんじゃないですか。それがテーマとして架空のまま、生涯のテーマとして活きている。青春時代の憧れを理想郷として追体験して白昼夢のようなものを作り出していく、恋愛しない人の恋愛小説のパターンなんです。

 付き合ったこともセックスの経験もないままカッコイイ男の子を書いていく、少女漫画的世界と通底しています。宮崎駿さんだったら何かしら、自然対人間とか、がっちりした実体験をつかめているんですが、新海さんはそういう実体験はないでしょうね。実体験がないからこそ作れる理想郷です。だからこそ今の若者の憧れの心を掴んだのかも知れません。

 働き方ということについても、考えさせられた1年でした。

 天皇陛下の生前退位と電通事件は、日本的な働き方という点で似ていますね。全身全霊を賭けるとか、生涯を賭けるとか。ここで理解していてほしいのは、世界の自由主義で豊かな国は1年間で11か月しか働いていない、ということです。夏休みを1か月とって、あのGDPを作り出しているんです。日本人は1か月余分に働いて、ドーピングしているようなものですよ。雇用を分け合えばいいと思うんだけどなあ。

 今のままの給料で夏休み1か月取れれば、恋をしたりみんな幸せになれると思うんだけれどな。貧乏で働いているだけ辛くて、それ以外のことに気が行かなくて生活が貧しくなっていることをもっと追及しないと。今の日本で、幸せな夫婦で面白い小説ってないんですよね。書けないかなと思っているんですが。

 若い子は気の毒です。でもネットばかり見ていると自分に都合の良い情報しか仕入れないから、だんだんと偏向していくよ。なるべく視野を広げてひとりの自由な意思決定ができる人にならないと、どんどん時代にすり潰されていくような気がします。世界と日本から少し距離を置いて、自分の楽しいことを生きてほしいです。

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