皇位継承に伴う重要な儀式である『大嘗祭』は、来年11月に執り行われるように調整が進められている。それはつまり、来年中には新たな天皇が誕生する事を意味している。
だが、それは陛下の願われた「退位の形」とは大きな違いがある。
「陛下はこれから天皇になる子孫たちも生前退位ができるように、退位の条件をしっかり定めて、永遠に恒久的なルール作りをしてほしいと望まれているといいます。ところが、政府が作った特例法案は前文か1条に今上天皇が退位する経緯と“個別理由”を組み入れることで、あくまで陛下だけに限った対応だと強調した内容なのです。それによって、恒久的な制度を作ることを否定しているように見えます」(前出・皇室記者)
12月23日に83才の誕生日を迎えられた陛下は、会見で次のように述べられた。
「天皇としての自らの歩みを振り返り、この先の在り方、務めについて、ここ数年考えてきたことを内閣とも相談しながら表明しました。多くの人々が耳を傾け、各々の立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝しています」
お言葉でわざわざ「内閣」という言葉を用いられたことに、「陛下の行き詰まる思いが滲む」と話すのはある政治ジャーナリストだ。
「そもそも官邸側は、お気持ち表明はおろか、陛下が退位の意向を持たれることにさえいい顔をしていませんでした。表明のきっかけとなったNHKによる第一報も、そんな政府の態度に業を煮やし宮内庁側から漏れたともいわれています。退位を支持する世論の手前、陛下のお考えをむげにはできませんが、官邸側が“陛下に限った生前退位”であることを強調するのにはそうした背景があるのです」
両陛下は今春、ベトナムを初めて公式訪問される。国内でも5月に富山県で行われる全国植樹祭や9月末からの国体(愛媛県)、10月の全国豊かな海づくり大会(福岡県)などへの出席が予定されている。陛下は強いお気持ちを胸に秘められながら、残された公務をただひたすらに全うされようとしている。
撮影■雑誌協会代表取材
※女性セブン2017年1月19日号