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2017年は「バカチューバー」大漁の年になるか

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

 わざわざネットで愚行を公開して大騒動になる事件が後を絶たない。かつてツイッターを席巻した「バカッター」だが、最近ではYouTubeにバカな投稿が大増殖中だ。そんな「バカチューバー」たちの動向について、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が愛をこめて解説する。

 * * *
 2013年、日本中を笑いの渦に巻き込むとともに、連日多数の映像を出し続けなくてはいけないテレビ情報番組のスタッフにとっては特需ともいえる「おいしい映像」を提供し続けた「バカッター騒動」が2017年、パワーアップして帰ってきた!

 バカッター騒動とは高知県のローソン店舗内のアイスケースで寝る若者(オーナーの息子)の登場を皮切りに、「回転寿司屋で醤油さしを鼻の穴に差すバカ」「食洗器に入るバイトのバカ」などが、次々とバカ写真をツイッターで公開した一連の騒動である。「バカ」+「ツイッター」で「バカッター」と呼ばれるようになった。

 この騒動により退学に追い込まれる者や、廃業せざるを得なくなったソバ屋が登場。冒頭のローソンはFC契約を解除されるなど、社会的な影響は小さくはなかった。

 それから約3年半の雌伏の時を経て、続々とバカが年末から登場している。しかも、今のトレンドは「動画」である。ザッと挙げると「コンビニおでんツンツン(指でつつく)男」「チェーンソーで運送会社恫喝男」「モノレールの線路に寝っ転がり喫煙中学生」「警察署出頭の際消火器ぶちまけ現行犯逮捕少年」といったところか。いずれも逮捕か厳重注意となっている。

 チェーンソー男以外は友人が動画を撮影しており、見事なまでの連携プレーを見せ、そのバカっぷりを全世界に配信し、身体を張ったエンタテインメントを完成させている。

 以前と比べてパワーアップしたのは、「動画」を駆使している点である。現在日本の警察は容疑者逮捕に至るまでに監視カメラの力に頼らざるを得ない状況になっているが、パワーアップした彼らはその犯罪行為を自ら証拠として撮影しわざわざ一般に公開するなど、警察の手も煩わさぬ親切設計だ。

 この何年間か、店員に土下座をさせるシーンを動画で公開し、恐喝容疑で逮捕されるなどの騒動はあったが、あくまでも単発の事件だった。これだけ立て続けに動画関連の珍事が発生してしまうと2017年はもしや「バカッター」ならぬ「バカチューバー」(バカ+YouTuber)大漁の年になるかもしれない。

 そして、動画の場合はネットへの波及も考慮しなくてはならない。なにせ、「ツイッターの1文+写真1枚」と比較し、動画の場合は、鮮明な顔、声、発言、体型、部屋の様子など膨大な量の情報を視聴者は知ることができる。これにより、ネットのお茶の間談義はさらに盛り上がる。

 チェーンソー男の場合、「YouTuberなめるな」「全世界に配信したる」という2つの言葉が人々の心を捉えた。IT業界の会議に出席すると、この男が話題にのぼり「YouTuberなめるな」が今年年末の「ネット流行語大賞」の受賞作品になるのでは、といった憶測をすでにされてしまっているほどだ。

 彼らの名前を検索すると一生これらの騒動が上位に入る悲しい状況になりかねない。今後彼らは何らかの優れた実績を作り、バカ騒動を検索結果から追いやることを期待したい。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2017年2月3日号

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