だが今までの医療ドラマと違う部分もある。まずはリアリティの追求だろう。今までは医師数人が医事監修を務めていたことが多かったが、今回は東京都医師会がテレビドラマ初の全面協力。劇中の病院、手術室もすべて実在している場所。もちろん手術台や機材も本物で、日々実際のオペが行われている場所で撮影しているのだ。木村自身がラジオで「ぼくら以外は全部本物」と語っていたことでもわかる。
もちろんオペシーンも超本格的。一手、二手、軌道修正していく細かいやり取りも、本物を見ているような錯覚に陥る。
病院の顧問弁護士(今作では菜々緒が演じている)という存在も、医療ドラマには意外と珍しい。最近では『破裂』(2015年、NHK)の坂井真紀が、また『ギネ 産婦人科の女たち』(2009年、日本テレビ系)で内田有紀がそれぞれ顧問弁護士として出ていたが、医療事故などリスクマネジメントが問われる中、今作でもどんな活躍ぶりを見せるのか。
◇ストーリーの重々しさは日曜夜に合うのか
手術のリアリティに関しては別の見方をすると、エンターテインメントは努力のあとが見えると、少し興ざめしてしまうところがある。また、これまでも医療ドラマの美術デザイン担当は、本物の病院にいくつも見学してセットを作りこむと聞くし、吹き替えなしで俳優が手術に挑むのは最近のドラマでは当然だ。
さらにストーリーの重々しさが、翌月曜の仕事を控え、憂鬱になりがちな日曜夜の空気感に合うかどうかは意見がわかれる。ちなみに同じ『日曜劇場』でヒットした医療ものは、SFと時代劇の要素が強かった『JIN-仁-』くらいだ。
しかし、娯楽性に関しての安心材料はある。演出陣に木村ひさし氏が加わっているという点だ。同氏は『ATARU』『99.9 -刑事専門弁護士-』『民王』でチーフ監督を務め、いずれも小ネタ満載、コメディ色の強い演出をすることで知られる。1話目でバナナを揃って食べていた3人の勤務医をさらに動かしていくことも想像できる。
このように、かつての医療ドラマと比較してみると、共通点ともに課題が浮き彫りになった『A LIFE』。ピアニスト、検事、パイロットなど、19個の職業を演じてきた木村拓哉が、記念すべき20個目の人生をどう生きられるか大いに注目したい。(芸能ライター・飯山みつる)