「例えば『ホテルの中で早朝に大きな音を出す演出をしたい』という要望もありました。このときは、ほかのお客さんへの配慮も必要でしたし、2フロアほど貸し切る必要があり、大型ホテルで急に対応するのは難しかった。
そこで、住宅地から離れていてその日一日全棟が空いている小規模なホテルを探し出し交渉してOKをいただきました」
ロケ場所の変更にもできるだけ柔軟に対応し、自分で現場に立ち会う。ある日は、朝5時から映画のロケの機材の搬入を手伝い、9時には情報番組のスタッフとロケ地に合った場所を探して歩き、午後はドラマのスタッフとロケ候補地を巡る。食事はおにぎりなどのさっと食べられるものと、妻が作ってくれる野菜のスムージーが定番だ。
何時でも電話を受けるため、できるだけこまめに仮眠をとるようにしており、いつも移動用の軽ワゴンの車内に寝袋を用意しているという。
過酷な毎日だが、それも「大好きな熱海を、より多くの人に知ってもらうため」と山田さんは言う。これまで人気ドラマ『とんび』(TBS系)、『HERO』(フジテレビ系)、映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』などのロケで、内容にふさわしい場所を探し出して、使ってもらった。
その結果、それまで知らなかった熱海の新しい一面を画面を通して知り、今度は自分の目で確かめてみたいという、ロケ地巡りを目的にした観光客の数も増えた。2011年度に247万人にまで減った宿泊客数は2015年度、308万人にまでV字回復している。
旅行ジャーナリストの村田和子さんはこう言う。
「さらに最近は、宿が相次いでリニューアルして客室や温泉などの施設も新しくなり快適に過ごせます。
また、高級旅館からリーズナブルなホテルまで揃うようになり、旅のスタイルや予算に合わせて、宿泊先を選べるのも大きな魅力です」
※女性セブン2017年2月23日号