ただ千葉真一として、どうやって演じたらいいのか? 1週間、考えに考え抜いて「これだ!」とひらめき、またアタマからシナリオを読み直して、その段階で90%はできあがっていたかもしれません。一言で言えば「千葉真一」を捨てること。何なら芸名ごと「大友勝利」に変えてもいいと思ったくらい。
あの頃の僕は、テレビドラマの『キイハンター』などでアイドル俳優と呼ばれていたけど、それを全部、捨てようと。大友になるために、特徴的な目をサングラスで隠し、ファンキーハットに赤いリボンを巻いて。登場シーンでは唇を引っくり返して割り箸をくわえているんです。
あとは何か……そうだ、木刀を持たせよう、と。深作監督と話しながら、暴力的なキャラクターを作り上げていきました。
〈あんた等も飯食えんような体になってもらいますけん!〉
そんなセリフが、そこいらを木刀で叩き壊すことによって一段と映えてくる。監督に「僕の広島弁は大丈夫か?」と聞くと、水戸訛りの監督は「アクセントなんかどうだっていいんだ、雰囲気さえ出ていれば」と答えましたね。役者人生でこんなに悩んだ役もなかったけど、それだけ「大友勝利」には愛着も深いですね。
【プロフィール】ちば・しんいち:1939年1月22日、福岡県生まれ。日本体育大学で器械体操の五輪出場をめざしていたが、ケガにより断念し、俳優の道へ。日本には珍しいアクション俳優として国民的な人気を獲得し、海外映画にも多数出演。映画・ドラマで今なお活躍。
※珠玉の名セリフ100篇を詳細に分析した『仁義なき戦い 100の金言』(石田伸也著、徳間書店刊)、『仁義なき戦い Blu-ray BOX《初回生産限定》』(2万9800円+税 販売:東映 発売:東映ビデオ)が発売中。本編のほか、貴重なボーナスディスクやブックレットなどを封入。
※週刊ポスト2017年3月3日号