若い熱狂的信者を量産する点では、幸福の科学は新宗教でもトップクラスです。こうした信者が成人して社会人や教団職員になることで、教団内部の結束がより強固になります。清水富美加さんもまさにそうした2世信者の1人でしょう」(藤倉さん)
しかし、國学院大学神道文化学部の井上順孝教授は、今後は親から子への「信仰継承」も難しくなると指摘する。
「情報化とグローバルの時代になり、これまでの常識が通用しない世の中になりました。これから先は、“親が信者だったから自分も信者になる”という構図が壊れて、親から子への継承も減ることでしょう。
これは新宗教や伝統宗教に限らず宗教全体に起こっていることで、これまで当たり前とされた先祖供養や葬式のやり方も変わってきているのが一例です。時代の変化に応じて宗教もまた変わっていくんです」
では、このまま宗教は役割を終えてなくなっていくのだろうか。井上さんはいくら時代が変化しても、「変わらないもの」もあると主張する。
「それは、“生きている意味”を求める人間の心です。たとえば病気になったら、人間はその病気の原因やメカニズムを知るだけでなく、“どうして私は病気になったのだろう”と意味を考えます。
実際に今、宗教に入信するのは、不幸があったり、困っているのに手を差し伸べてくれる人がいなかったり、難病に苦しんでいたりして、“なぜ私は苦しいのだろう”と考える人ばかり。そういう人は“答え”がほしくて宗教に入信します。こうした深い悩みをスマホやネットで解決するのは難しい。いつの時代も、宗教が苦しんでいる人に“答え”を与えてくれることに変わりはありません」
信仰が人を救うこともある。「東北に元気を」「日本を信じよう」――さまざまな掛け声とともに、人々が心を1つに祈り、犠牲者を悼んだ3.11が今年も間もなくやってくる。
2011年3月11日に東日本を襲った大震災は、1万8000人以上の死者・行方不明者を出し、さらに原発事故で多くの家族が故郷を追われ、分断された。そんななかで宗教は、人々の大きな拠り所の1つになったと作家で僧侶の玄侑宗久さんが語る。
「震災で大切な人を亡くした人々は頭では喪失を理解はしていても、心がついていかずに苦しみました。そんな時、仏教の葬儀や儀式の力を再発見することも多かったと思います。深い悲しみにとらわれた人が、祈りの時と場所を得られたことが大きかった。
どんな宗教かを問わず、人は苦しみや悲しみにとらわれた時、“目に見えないものがわれわれを支えている”という宗教的な心を必要とします。今は雇用が不安定だったり、一部で格差も広がっています。先行きが見えず、不安の多い時代だからこそ、現実とは少し違った価値観を提供する宗教の出番があるのです」
※女性セブン2017年3月9日号