芸能

芦田愛菜 『山田孝之のカンヌ映画祭』でも偏差値の高さ発揮

大人も「さん付け」してしまう雰囲気を持つ

 役者として学歴は必ずしも必要なものではない。だが、この人の場合は、あらゆる局面において「偏差値」の高さをうかがわせる。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 今春、中学生になる芦田愛菜さんが「超名門私立中に合格」し大きな注目を集めています。「1日12時間の猛勉強」、「難関校を突破」と話題に。芸能界で仕事をしつつ、短期間で集中的に勉強して最難関校を合格なんて、その能力はたしかに尋常ではありません。

 いや、芦田さんは、ただお勉強ができるだけではない。もし、偏差値の高さに注目するのであれば、それを象徴するようなドラマが今放映中です。芦田さんの卓越した理解力、位置取りの正確さ、集中力。その「役者偏差値」の高さに、惚れ惚れしてしまうドラマが『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京・金曜深夜0時52分~)。

 内容は……世界の映画賞の最高峰と言われる「カンヌ映画祭のパルムドールを獲ること」を目指し映画制作をする過程を追っていく。いわばドキュメンタリーとドラマとを巧妙に掛け合わせ、虚構と真実のあわいを駆け抜けるような、実に不思議な作品です。

 主な登場人物は、プロデューサーの山田孝之氏、映画監督の山下敦弘氏。そして芦田さんは「親殺しをしてしまう主人公」という役柄で映画出演を依頼される。ランドセルを背負って現れた芦田さん、あくまで実年齢「小学生」の記号をまとっています。

 そして3人は、カンヌ映画祭を本気で目指すために「カンヌ」についての研究を開始する。日本映画大学を訪ね、カンヌに関する講座で学び、実際の学長で映画評論家の佐藤忠男氏や、パルムドールを受賞した今村昌平監督作品『うなぎ』の脚本担当・天願大介氏にアドバイスを求める。さらに資金集めに奔走したり、キャスティングのため面接を重ねていく。

 前半の見所の一つが、『萌の朱雀』『殯の森』でカンヌ映画祭グランプリ等を受賞した河瀬直美監督に会いに行くくだり。どうしたら賞を取れるのかと問うプロデューサー・山田氏に対して、河瀬監督は説教。「何かのためにじゃなくて、自分の魂のために、みたいのはないの?」「カンヌとかどうでもいいんじゃないの?」

 賞狙いの打算的な姿勢が思いきり粉砕されるあたり、スリリング。河瀬監督ならきっとこう言うだろう、という映像。ウソと戯れることから一番遠そうな、きまじめな人物を登場させ、映画論をふっかけて反応を撮る。虚実ギリギリを狙うあたり、非常にハイレベルな作り物になっています。

 それだけではありません。鋭いクリティックが潜んでいる。「カンヌで受賞する意味とは」「カンヌという権威主義」について、つまり既存の価値体系を問い返す作用も働いていて面白い。……という凝ったドキュメンタリー・ドラマの中で、芦田さんが光っています。

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