1本目の本番が終わった後、大混乱の地下鉄駅から無事、日テレに歩いてやって来たスタッフが2人いた。
もう1人のスタッフは、2本目の本番の収録が終わった夕方頃、ようやくやってきた。一時、救急車で付近の聖路加病院に搬送されていたという。ビートたけしと一番近しい衣装担当スタッフだった。幸い無事だったようで、医師の許可を得て病院からスタジオに駆けつけたのだ。
私はそのスタッフに「たけしさんに顔を見せてあげろよ」と伝えた。
たけしは、ちょうど迎えの車に乗るところであった。恥ずかしそうにスタッフが近づくと、たけしも彼に気が付いた。ビートたけしは、声を上げるわけでもなく、彼の顔を見てニヤリと笑った。そして、車に乗り込んだ。
後日、たけしの付き人兼運転手に聞いたところ、たけしは「本番中でもいつでも、彼が着いたら手で合図をして知らせてくれ」と言っていたらしい。
※吉川圭三/著『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』(小学館新書)より