◆2人とも筒香より上
清宮の父がラグビートップリーグ・ヤマハ発動機監督の克幸氏であることは有名だ。一方、安田の父・功氏も、昨年末の全国高校駅伝女子で2年ぶり2度目の優勝を果たした大阪薫英女子陸上部の監督である。12歳上の兄・亮太は、PL学園で一学年下の前田健太(現ドジャース)とバッテリーを組み、現在は三菱重工名古屋で主将を務める。
共にアスリート一家に生まれたふたりは、「東の清宮、西の安田」と、常に比較されるライバル関係にある。
昨秋の神宮大会決勝で早実と履正社は対決し、清宮と安田は、揃ってライトスタンドに本塁打を叩き込んだ。軍配は履正社にあがったが、試合後、安田は清宮の印象をこう語った。
「レベルは清宮の方が上。自分が成長する上で、良いモチベーションになる」
「君付け」しなかったところに意地も透けて見えた。
選抜における安田の初打席は大会初日だった。相手は、昨秋の東京大会決勝で、清宮から5打席連続三振を奪った日大三のエース左腕・櫻井周斗。清宮との力の差を測るには絶好の相手だ。安田は最初の3打席で3三振。まるでタイミングが合わなかった。
しかし、最終第5打席ではレフトの頭上を弾丸ライナーで超えるタイムリーを放って勝利に貢献。
この一打を評価したのは、名門・横浜高校の元コーチで、甲子園通算51勝の渡辺元智監督を参謀として支えた小倉清一郎氏だ。
「膝とキンタマの間ぐらいの高さのボールを、強い打球で逆方向に持っていった。これは清宮にはない技術。ただ、最初の3打席は、すべてボール球を振っていた。注目が集まり、良いところを見せたいという“色気”と、もろさが出た。1打席目は三振しても、2、3打席目は対応しないといけない」
厳しい指導で松坂大輔や、今回のWBCで4番に座った筒香嘉智(現横浜)らを育てた名伯楽は、清宮についても次のように語った。
「インコースのボールを捌く能力は同じ左打者の安田より上かもしれない。引っ張り専門の清宮のほうが、飛距離も上。ただ、外のボールに対しては……。安田が右手でバットをコントロールして振り出しているのに対し、清宮は左手でコントロールしているように感じる。それだと、遠いアウトコースのボールにバットが届かない。また、一塁しか守れないのはプロに行ってから困るでしょうね。外国人選手と競わなければいけないポジションですから」
だからといって「安田が上」と断じるわけではない。
「もう少し成長を見守る必要がある。高校時代の筒香は、バックスイングから振り出す際に腕がギッコンバッコンし、振り遅れてばかり。私は“どん詰まりの筒香”と呼んでいた。高校時点の筒香と比較すれば、ふたりの方が力は上回る」
プロ入り後に筒香が悪癖を修正して伸びたという意味でもあり、ふたりが筒香のように活躍できるという保証ではない。