「借金を巡って親族とも軋轢が起き、総額は10億円にものぼったといいます。また、同時期に系列の保育園で労働運動が起き、運営を労働組合が握りました。多額の使途不明金を不審に思った従業員によるものでしたが、家業を脅かされた夫妻の胸中には“乗っ取られた”という怒りがこみ上げた。親族や労組が“倒すべき敵”と映っていた夫婦は、その頃から何事にも攻撃的になっていたように感じます」(別の夫妻の知人)

 預金通帳の残高はわずか3万円。諄子氏は自殺を考え、籠池氏の頭には閉園の2文字もよぎった。それでも何とか必死の思いで経営を立て直した籠池ファミリーだったが、次から次へと障害が立ちはだかる。

 2004年、運動会で園児たちに『愛国行進曲』を歌わせたことが報じられ、批判が殺到。左翼団体がデモを行い、自宅前に糞尿がまかれたこともあったという。

 そうして一家が苦境に立たされるたび、「愛国主義」はより強固にエスカレートしていく。2015年の雑誌のインタビューで当時を振り返り、《どん底の時期も必要》と、籠池氏は次のように語っていた。

《自分の信念が試されますから。平穏な時に「国家社会のために」とお題目のように唱えるのではなくて、本当にギリギリのところでも抱き続けることができるのかと。中途半端な思いしかなかったら、いま頃は挫折していたかもしれませんね》

“行進曲騒動”をきっかけに、籠池氏は「教育勅語」を教育の柱に据えることを決意する。体力づくりや体験学習に力を入れ、4才児には伊勢神宮を参拝させた。自己表現力を身につけるため、鼓笛隊や日本太鼓をカリキュラムに入れた。以来、塚本幼稚園では毎朝9時30分に園児が国歌斉唱をした後、教育勅語に書かれた十二の徳目を朗誦するようになった。

 そんな籠池氏の前に現れたのが、愛国者を自認する保守系の安倍首相だった。

「第二次安倍政権が誕生した時、籠池さんは『安倍先生には日本をよくするためがんばってもらいたい』と本当に喜んでいた。彼にとって安倍首相は『愛国主義』という“一家の闘い”を権威づけてくれる強力な装置だったのです」(学園関係者)

※女性セブン2017年4月13日号

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン