◆「後は任せて」という言葉に救われた
一方、報告せざるを得ないのが、会社やパートなどの勤務先だ。キャリアを失うことが怖くて、がんだと会社には報告しないまま手術を受ける人も多いと川崎さんは話す。
本来なら、入院や手術で、今まで通り働けなくなる場合、今後の方針も含め、会社と相談する必要がある。
IT企業の経営者だった高山さんは、「後は任せてください」と部下に言われ、安心して治療に専念できたという。しかし、治療が長引くにつれ、昔の元気な自分に戻れないことを悟る。
「私の場合、15kgもやせてしまい、電車に乗ること、階段を上ることすら苦しくなりました。がんになると、治療後、昔と全く変わらぬ働きをするのは難しい。ですから、勤務時間や仕事量、今の体調で何ができるか、会社と話し合えると、負い目を感じず働きやすくなるはずです」(高山さん)
また、親族から報告を受けた場合は、関係性が近いからこそ余計に、他の親族への勝手な報告は控えるべきだという。親族の場合、病院や治療法を調べるなど、一緒にがんと闘う心構えをしておこう。
◆メールより直筆の手紙が心に響く
多くの人から声をかけられた中で、高山さんの心にもっとも強く残ったのが、友人からの直筆の手紙だったという。
「初めはみんなメールをたくさんくれましたが、治療が長引くにつれ、少なくなって…。それでも、大学時代の友人は、すいかの絵はがきなど、季節ごとに直筆の手紙を送ってくれました。SNSやメールだと返信せねばと思ってしまいますが、手紙ならそういうこともなく、その距離感が心地よかった」(高山さん)
主観的に考えず、相手の立場に立って、かける言葉や方法を選ぶ。それが大切なのだ。
※女性セブン2017年4月13日号