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日本国憲法誕生、そのすぐそばにいた二人の女の物語

 彼女は1912年、現在の東京都千代田区に生まれる。祖父は日本画の大家で、自伝「私の足音が聞こえる」にはその豪奢な生活が綴られている。

 彼女がケーディス大佐と知り合ったのは、首相官邸でGHQ高官を招待して開かれたパーティだった。英語が堪能で戦前から各国大使館のパーティなどに呼ばれるなど社交性が高いので、官房長官からホステス役として参加を要請されたのだ。

 二人は「チャック」「ツーチャン」と呼び合う仲だった。

《彼と私は本当に愛し合っていた。それ以上に尊敬しあっていた。お互いにまわりの人に迷惑をかけないように、しかし、熱烈に愛し合っていた》(「私の足音が聞こえる」より)

 ちなみにこのときケーディス大佐も既婚者で、いわゆるW不倫であった。

 ふたりの甘い関係のなかで、突然、仰天するような話が出てくる。

《私はケーディスに天皇陛下をどう思うか、戦犯にすべきかどうか、退位すべきかどうか、私の本当の意見を聞きたい、と何度もいわれた》

《「我々は今まで何度も会議をしているが、どうしても結論が出ない。貴女はどうしたらいいと思うか、まず貴女の気持ちをいって欲しい」/私も決心して答えた/「私は素直に天皇制を残したいと思う。ただし今までのように神の如き特別扱いは絶対にしないこと(以下略)》

 GHQ案の実務責任者が、自分の愛人に天皇制の存廃について相談しているのである。事実なら目を剥くような話だ。さらに天皇制を巡るふたりのやりとりは続く。

 ケーディズが鳥尾にいう。

《(前略)今日が最後の会議で今は或る国の代表が、すごく天皇制維持に反対をしている。(中略)もう一度聞くが、ツーチャンは天皇制維持に賛成なのだね、残したいのだね」》

 鳥尾は答える。

《(前略)私は思わず「お願い」と手を合わせていた。夜遅く電話が来た。/「がんばったよ。お休み」/私は眼頭が熱くなった》

 思わず「ほんまかよ!」と叫びたくなるようなやりとりである。

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