ちなみに北朝鮮の建国の父とされている金日成は、日本に統治されていた当時の朝鮮本国ではなく、中国での抗日パルチザン闘争を通じて、朝鮮独立運動を目指したとされている。ならば、今の北朝鮮独裁体制を解放するため、中国にその根拠地を作るという発想があってもいいだろう。
もちろん、中国がたやすくそんなことを認めるわけがない。しかし、現状のような米中首脳の政治的判断に振り回されるより、よほど効果的ではないだろうか。さらに、北朝鮮の人権問題を国際的イシューとする上で、国連人権理事会などでEUとともに主導役となってきたのは日本である。日本としては北朝鮮の人権侵害の解決に向けて積極的に取り組まなければならない責務がある。もちろん、そのなかには日本人拉致問題も含まれる。
北朝鮮が完全なる核武装国家になれば、金正恩は手のつけられない独裁者として東アジアに君臨することになる。それを防ぐために求められるのは今のような対症療法ではなく抜本的な外科手術、すなわち金正恩体制を変革させるしかない。そして当たり前だが、その手段は武力攻撃だけでないのである。
●こ・よんぎ/関西大学経済学部卒業。1998年から1999年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
※SAPIO2017年6月号