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LGBTの介護サービス経営者に勇気を与えた言葉

 夢と希望の『ラ・ラ・ランド』もよかったが、アカデミー賞作品賞はこの映画で間違いなかった。人種や、LGBTという性の多様性を認めない一部の風潮に対して、「生」の輝きを見せつけようという映画人たちの心意気が込められているように思った。

 ただ自然体でいれば、自分らしく生きられるというものではない。

 葛目奈々さんは、LGBTの当事者。24歳で性転換手術を行っている。戸籍上の名前も男性名から現在の名前に変えた。水商売を経験した後に介護の世界に入り、介護サービスの経営者として働いている。

 奈々さんが「ほかの人と何か違う」と感じたのは、子どものころから。小学校では女の子とばかり遊んでいた。高校生になると、同級生の男性を好きになり、心と体の性の不一致に苦しむようになった。18歳のとき高校を中退し、上京。新宿二丁目のニューハーフの店で働きはじめる。お金をためて、25歳になったら看護学校に入り、看護師になるというのが、彼女の夢だった。

 この人のすごいところは、自分を客観視できていることだ。自分の現実をしっかり受け止めているところがいい。

 しかし、看護学校からLGBTという理由で入学を断られてしまう。10年以上前は、まだLGBTという言葉もよく知られていない時代だった。絶望のなかで彼女は介護の門をたたく。「どういうセクシュアリティーであれ関係ない」

 介護の専門学校で言われたその言葉が、彼女に勇気を与えた。貯めたお金で、介護の勉強をし、残ったお金でデイサービスを開設した。現在では、デイサービスを2つ、訪問介護と居宅介護支援事業所も経営している。

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