介護を受けている高齢者も、「年だから仕方ない」と、言いたいことをのみ込み、やりたいことを我慢してしまうことはないだろうか。年齢で人を差別するエイジズムは、自分の首を絞めることである。
以前、奈々さんの経営するデイサービスを訪ねたことがある。明るく、全体的にやさしい空気が流れているような気がした。
「自分らしく」あることの難しさと大切さを知っている奈々さんだからこそ、高齢者が「自分らしく」いられるように、気を配っているように感じられた。
「オレはオレだ」
『ムーンライト』の主人公シャロンのように、だれもが堂々と言い切ることができ、お互いの違いを尊重し合えるような社会をどうやって築いていくか。とても大切なことだと思った。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『遊行を生きる』『検査なんか嫌いだ』。
※週刊ポスト2017年5月26日号