それでも、この選曲はまだ良かった方かもしれない。40代の会社員の男性は、同僚の父親の葬式で耳を疑った。
「セレモニーホールに到着すると、シンセサイザーで“生演奏”されていたのです。随分豪華だなと思ったのですが、故人を見送る時の曲が何と『太陽にほえろ!』のメインテーマ。あの、タララ~ってやつです。こちらは曲に合わせて盛り上げたほうがいいのか、あくまでしめやかに送り出すべきなのか迷ってしまい、とりあえず頷きながらリズムを軽くとっておきました。どんな表情でいるのが正解だったのか、いまだにわかりません」
脳裏には爆発を避けながらパトカーが激走する様子が浮かび、なんとも言えない雰囲気だったという。
「後で同僚に聞いたら父上は石原裕次郎の大ファンで、葬儀社から好きな曲を生演奏できると言われて選んだとのことです。サンプルに裕次郎の『わが人生に悔いはなし』や、タンゴやジャズ、洋楽ポップス、ダンスミュージックもあったので“だったらいいか”と判断した、と言っていました。ご遺族は父上らしい式になったと満足していたので、それでよかったのでしょうけど……」(同前)
※週刊ポスト2017年5月26日号