「取り組んだら『放すな』、殺されても放すな、目的完遂までは……」──第四代社長・吉田秀雄氏が電通マンの心構えを説いた「鬼十則」は、新入社員過労自殺に端を発する違法残業問題を受けて、社員手帳から姿を消した。
5月12日、その「鬼十則」に変わる新たな心構えが、社員向け掲示板に掲載された。「新しい電通を創る」と題された文書は、〈電通は何のために存在するのか?〉という問いかけから始まる。
〈いま、目の前にある課題。/「法令遵守」と「社員の健康」/コンディションを犠牲にしてでも勝ちを追い求めた。/間違っていた。〉
ポエム調の文体で、これまでの鬼十則の精神を否定するかのような内容が60ページ以上にわたって続き、こう結ばれる。
〈今までの仕事のやり方をいったんリセットする。最初はうまくいかなくても、無理だと思っていても、それが当たり前になる日がきっとくる。/創り出したゆとりで、旅に出る、書を読む、家族と過ごす、新しいことを始める、自分の成長を実感する。(中略)2年後、5年後、10年後、電通に入って良かったと心から思える。〉
仕事の厳しさなどどこへやら、もはや“仏十則”とでも言うべき変わりようである。電通はこの文書の意図についてこう説明する。