「安倍首相が再登板以来、力を入れてきたのがメディア対策だ。首相が大手紙や民放キー局の社長や会長と相次いで会食して手なずける一方、2014年の総選挙前には側近の萩生田光一氏を通じて民放各局に“報道の公平中立を守るように”という圧力文書を配って恫喝もした。そのアメとムチの結果、いまや大メディアは政権にすっかり取り込まれ、安倍政権に不利な情報があっても報じなくなった。
今回の読売の前川氏の報道は、さらに進んで、メディアが政権にとって都合の悪い人物のネガティブキャンペーンにまで加担する関係になったように見える。安倍政権の問題を明らかにしようとすれば、新聞にスキャンダル情報をリークされて社会的にダメージを受けるという印象が植え付けられる。日本社会にとって非常に危険な兆候です」
逆に朝日新聞のように政権批判をすれば、ネットで“言論テロ”と批判され、安倍首相がそれに「いいね!」を押す。これでは現場の記者はますます萎縮する。
そうした傾向は、「安倍首相ガンバレ」という森友学園の園児たちの映像が報じられて批判が高まり、首相が各社の官邸詰め記者を集めて中華料理を振る舞った今年2月の「赤坂飯店の夜」から顕著になってきた。
安倍首相が「読売を熟読せよ」と軽口を叩いたのは、大メディアの幹部も記者も自家薬籠中のものにしたという自信から――そう考えると、朝日新聞以外の複数の新聞・テレビが文科省内部文書を入手しながら、報道に積極的でなかったという奇妙な状況の裏がよく読み解けるのである。