そもそも、その経営者が本当に優秀だったら、会社が売りに出るわけがないのである。しかし、日本側の社長は自分が続投を頼んだ手前、社員の経営者批判に耳を傾けようとしない。投資銀行に助けを求めても、彼らのビジネスは“焼き畑農業”のようなものなので、M&Aの成功報酬をもらったら後は知らん顔で、次の森を焼きにかかっている。日本側の社長はなすすべがなくなってしまうわけだ。
M&Aでは、デューデリジェンス(事前に投資対象企業の財務状況や収益性などを精査して資産価値を査定すること)が重要とされる。だが、日本企業はたいがいデューデリが甘くなるか、子会社・孫会社にまでは及んでいない。東芝やLIXILなどの失敗も、それが命取りになった。
※週刊ポスト2017年6月9日号