あとは羽田空港からプライベートジェット機でアメリカに連れて行かれ、現地ではストレッチリムジンが迎えにきて、豪華なディナーで歓待される。帰る頃には仮契約の書類にサイン……という塩梅だ。投資銀行の手口は十中八九、このパターンである。そんなVIP待遇を経験したことがない日本企業のサラリーマン社長は、これにコロッと騙されてしまうのだ。
しかも、多くの場合、相手企業の経営者と話してみると、こちらの考えをよく理解している、気に入ったので引き続き彼に経営を任せよう──となる。いわゆる“ゴールデン・カフリンクス(金のカフスボタン)”と呼ばれるもので、買収の際に、たとえば現経営陣は2年間クビにできない、クビにする時は巨額の違約金を払わねばならないというような身分保証契約を結ぶことを言う。
これが大きな問題で、蓋を開けてみたら経営者はサボるし、社員は不満だらけ、というケースばかりなのだ。