──経営者といえば、暴力団が介護事業所を運営しているというのにはさすがに驚きました。
「現在進行形で、多くの組織が都道府県から認可を受ける指定介護事業所を運営しているようです。見た目は普通の介護事業所、実態は暴力団直営で、当然コンプライアンスを守るわけがない。自社で雇用するケアマネジャーや医者、歯科医、接骨院、社会保険労務士などと組んで架空請求しまくる。さらに資産のある高齢者には高額商品を買わせまくり、挙げ句に助成金詐欺も。正規の介護報酬の他に、いくつもの詐欺的な収入源があるので、それはめちゃくちゃ儲かりますね」
──さらに、国の方針で元受刑者たちが介護現場に投入されているとか。
「2016年11月に法務省コレワーク(矯正就労支援情報センター)の業務が開始されました。刑務所出所者を介護現場に誘導する取り組みです。女性犯罪の多くは窃盗犯と薬物中毒犯で、再犯率は高い。そういう類の人々が介護現場に投入されたらどうなるか。結果は火を見るより明らか。窃盗事件が増え、施設職員たちの間に薬物が蔓延する。役人は現場をわかっていないから、こういう安直な発想しか出てこないのです」
──絶望的な気持ちにさせられますね。
「さらに嫌な予感がするのは、これから全国の市区町村で始まる地域包括ケアシステムですね。簡単にいえば、軽度要支援高齢者を病院や介護施設から締めだし、自宅に帰らせて、地域住民のボランティアなどによって介護をするという取り組み。軽度要支援高齢者は普通に歩行ができる認知症高齢者が多く、間違いなく大混乱となります。普通に考えて徘徊による高齢者の迷子が多発、車に轢かれて亡くなる認知症高齢者も増え、地域によっては冬場など一晩で凍え死ぬことも起こりうる。朝方、路上に高齢者の遺体がゴロゴロと転がるような絶望的な事態になるかもしれません」
──何か手はありますか?
「早急に必要なのは介護業界を『高齢者ではなく、介護職のための業界にする』ことです。介護職たちの報酬を上げることはもちろん、高齢者のためのサービス業という意識を少し捨てる。高齢者より、現役世代の介護職が大切という考え方を全国民がするべきです。これまでお客様扱いされてきた高齢者には厳しいかもしれないが、自分たちも我慢しなければ、そのツケは自分たちに返る。高望みはせず、ある程度の諦めも必要です。そこからスタートすれば、現在の暗黒な状況が少しは好転するのではないかと思いますね」