イッセーの一人芝居は齢を重ねるにつれ、ますます洗練され、深みを増していくのだろう。そして、その一人芝居に呼応して映画やドラマでの演技にも彩りが加わる。イッセー尾形は、こう言う。
「漱石さんは、死に際に『いま、死んじゃ困る』と言ったそうです。きっとまだ、書きたいことがあったんでしょうね。だから、いま死ぬわけにいかないって。これに勝る最期の言葉はないと思っています」
●いっせー・おがた/1952年生まれ、福岡県出身。東京都立豊多摩高等学校卒業後、1971年より演劇活動を始める。1981年、『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で様々な職業の人物を演じ、8週勝ち抜きで金賞受賞。直後に抜擢された、ドラマ『意地悪ばあさん』(フジテレビ系)の巡査役で一躍注目を集める。1980年代に始まった一人芝居『都市生活カタログ』シリーズは人気を集めるとともにゴールデンアロー賞演劇芸術賞も受賞し、海外公演も行なわれた。一方、ドラマ・映画の出演も多数。今年公開されたマーティン・スコセッシ監督の『沈黙─サイレンス─』では、第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞次点になるなど演技が高く評価された。一人芝居『妄ソーセキ劇場』は、京都府立芸術文化会館で秋にも上演される予定。
■撮影/江森康之 ■取材・文/一志治夫
※週刊ポスト2017年6月30日号