その一例が、頭痛薬などで処方される「ロキソプロフェン」(代表的な商品として『ロキソニン』がある)と躁うつ病などで処方される躁病薬「炭酸リチウム」の組み合わせだ。
「解熱鎮痛薬として幅広く処方されるロキソプロフェンやイブプロフェンなどは腎臓に負担をかけるため腎機能を低下させることがあります。この影響で腎臓からの排出が抑えられた炭酸リチウムの血中濃度が上がって、中毒症状になる可能性がある。
実際に私の知る患者で、炭酸リチウム服用中に背中や腰の痛みを訴えて市販の痛み止めを服用し、意識がもうろうとして入院された方がいました」(堀氏)
こうした「薬と薬」の飲み合わせの問題は、専門家である医師のチェックを経ているはずの処方薬同士でも起きることがある。
場合によっては重大な医療事故に発展するかもしれない事例を全国8800以上の薬局から収集し、原因を分析して注意喚起する事業がある。公益財団法人・日本医療機能評価機構の行なう「ヒヤリ・ハット事例収集分析事業」だ。事例はネットで公表されて閲覧できる。
2017年3月に報告された事例では、風邪で内科を受診してマクロライド系抗生物質「クラリス錠」を処方された50代女性に対して、調剤薬局の薬剤師が他の服用薬を確認すると、睡眠薬「ベルソムラ錠」があった。
「クラリス錠」と「ベルソムラ錠」は併用禁忌であり、一緒に服用すると睡眠薬のほうの作用が著しく増強されてしまうのだ。薬剤師が処方医に照会を行ない処方が他剤に変更された。事例データベースでは医師による確認漏れが発生要因と記されている。