この関係は、恋人同士のようでもあるし、友人のようでも、家族のようでもあります。一般に地下アイドルのファンは疑似恋愛を求めて応援していると思われがちですが、このように地下アイドルとの関係には様々な要素が含まれているので、全員が恋愛感情だけで応援しているわけではありません。明確な恋愛感情を抱いて応援しているファンは、「ガチ恋ファン」と名付けられて分類されているのです。
恋愛感情は人を強く夢中にさせますが、それとは違う、大人になってから信用し合える人と出会えることもまた、得がたい喜びです。私はライブに出演するたびに、恋人でも友人でも家族でもなく、でもその全てみたいなファンの存在に大げさでなく感動します。だから、アイドルとファンという関係になれることを、ひとつの成就だと考えてきました。
いつか印象的な出来事がありました。いつも熱心に応援してくれているファンの人から、「たまちゃんのこと本当に好きだったけど関係が崩れちゃうから、気持ちを落ち着かせました。もう大丈夫なので、これからもよろしくお願いします」と言われたのです。
事後報告です。最初から諦めないで、アタックしてみればいいのにと思われるかもしれませんが、彼はこれまでと変わらずに私と信頼関係を築いていくこと、そして周囲のファンと友人として付き合っていくことを決断したのです。私たちはいまの関係が得がたいものであることを常々思い出しながら、曖昧な危うい関係を保っています(もちろん、彼が苦しい思いをしなかったわけではないですし、これを聞いて私が苦しくなかったわけでもありません)。
結婚についての考えはファンの年代と、既婚か独身かによっても違います。私はこれまでの活動の中で、ファンのメイン層が、30代独身男性→50代(子供が成人済み)→40代バツイチ→40代独身男性(初期の30代独身男性の10年後)と変化してきました。
新しいカルチャーを発信するアイドルやグループには10代20代のファンも見受けられますが、長く活動しているアイドル(地下アイドル)は、30~50代のファンが中心となって支えています。ゼロ年代から始まった現在のアイドルブームもだいぶ成熟しきって、現在は40代の独身男性がボリューム層になっている印象です。
また、先述した事後報告の彼からも、「結婚して出産しても、産休が終わったら地下アイドルとしてまた活動してほしい」と言われています。こんな風に書くと、普段からファンに結婚を匂わせていると思われそうですが、全くそんなことはありません。でも、こうしていつかやって来る(来ないかもしれない)ことまで考えてくれているなんて有り難いことです。同時に、どうしたら彼らに幸せになってもらえるのか、私も考えてしまいます。