国内

前向きに明るい気持ちで墓選ぶ時代はもう始まっている

白い小さな袋を破っ、中に入った粉骨を海へ…

 さまざまな選択肢がある時代、どのように最期を葬られたいかも多岐にわたる。土に還るのが樹木葬だとしたら、“海洋散骨”は、海に還るというもの。ノンフィクションライターの井上理津子さんが向かったのは東京湾だ。お墓をどうしよう――そういった悩みを抱えた人たちの間で近年注目を集めるクルージング船による海洋散骨に同乗した井上さんがリポートする。

 * * *
「菩提寺の住職に叱られることを覚悟で『母の遺骨はお墓に入れずに、散骨をしようと思っているんですが』とお話ししたんです。そしたら、『この頃は、お墓をいろいろに捉えるかたがいらっしゃるので、それも一つの選択肢だと思います。よく考えた上で散骨という結論を出されたのでしょうから、お考えを尊重します』とおっしゃってくださったんです」

 こう話すのは、東京都足立区に住む片岡留美さん(52才・仮名)だ。

 品川区にある菩提寺とは、いわゆる寺檀関係が長く、片岡家のお墓は、境内墓地の一角に江戸時代から建っている。納骨されているのは「曾祖父母からなのか、もっと前の代からなのか、わからない」そうだ。

「25~26年前に亡くなった祖父母、母からすると舅姑を、母がひとりで介護したんです。当時、長男の嫁として当たり前のことだったでしょうし、仲が悪かったわけでもありませんが、『お墓までは失礼したいわ』という気持ちだったと思います。10年ほど前から『私は(お墓に入らなくて)いいわ。消えてなくなりたいわ』と、軽い感じで話していました」

 と、留美さんは言う。海への散骨を希望したのは、カルチャー教室でフラダンスを習っていたからだろうとも。

 父(82才)が「本人の希望を尊重してあげたい」とまず賛成。叔母たちに「散骨希望」を伝えると、「実は私も嫁ぎ先のお墓に入りたくないのよ」と異口同音に。「嫁ぎ先のお墓に入りたい女なんて、いないんじゃない」と言う向きまでいた。母の長兄(80代後半)は「年長なだけに、反対されるだろう」と危惧したが、「拍子抜けなくらい、いちばん賛成してくれました」。

 こうして親戚一同の賛同を得た上で「最後の難関」とお寺に出向いたところ、先述のとおり、たやすく理解が示されたのだ。留美さんは、「チャーター散骨プラン」を選び、親戚ら約20人が乗船した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン