「小池氏はいわば“ナメている”棋風。序盤、中盤と相手を油断させ、終盤で一気に攻める。一方、藤井四段は確かな演算力を持ち、対戦相手を引っ掛けるような手は指さない。真正面から勝負していく」(同前)
デビュー以来公式戦で29連勝を果たした藤井四段だが、プロ昇格前の「奨励会三段リーグ戦」では5敗を喫している(13勝)。「最後に負けた相手」は、2016年9月3日に対局した坂井信哉三段(24)だ。
取材依頼のメールに、「自分は平凡な三段です。藤井戦も実力勝ちとは程遠く、ただ偶然勝ちになっただけです」と返すのみだった坂井三段。藤井四段に勝利を収めた第59回三段リーグ戦は、9勝9敗と五分で終えている。三段リーグの実力伯仲ぶりと、その中で5敗を喫しながらも1期で昇格を果たした藤井四段の強さが改めて浮かび上がる。
前出・文本氏は、「藤井君が並み居るプロの棋譜を学んだ教室ですが、今では彼の棋譜を並べて子供たちが稽古しています」と語る。歴史に学んだ藤井四段自身が、今まさに棋史に名を刻んでいる。
※週刊ポスト2017年7月14日号