記者が情報公開請求をしたのは5月2日。都の情報公開条例では原則、14日以内に開示するか、しないかの決定を行うルールになっている。だが期限の5月16日に記者の元に届いたのは「開示決定延期」という通知で、条例上許される最大の60日まで延長するという。さらに担当課長が決済したのはじつにその最終日にあたる6月30日金曜日であったばかりか、記者に連絡があったのは都議選(7月2日)を挟んだ週明けの7月3日のことだった。
都中央卸売市場管理課の担当者に経緯を尋ねると、珍回答が返ってきた。
──都議選前に報道されないように、わざわざ期限を延長したのか。
「開示するかどうかの検討をするのに2か月かかっただけで、都議選のことは考慮していない。情報公開を所管する都生活文化局の担当者にアポイントをとって協議するのにも時間を要した。決定が金曜日の午後8時と通常の業務の時間外だったため、連絡は週明けとさせていただいた」
──2枚の文書の一部黒塗りを決めるのに、2か月もかからないはずだ。
「対象文書を特定し、個別企業への交付額を開示することの影響を検討するのに時間がかかった」
──知事や特別秘書から指示されたのか。
「小池知事や特別秘書にはブリーフィングしていない。局長に判断を仰いだ。ご批判は受け止める」
30代の若い職員は苦渋の表情を浮かべていたが、なんのことはない。小池知事への“忖度”に基づく牛歩戦術だったのだ。
市場移転問題で告示直前の6月20日、〈豊洲移転+築地再開発〉という基本方針を明らかにした小池知事は、移転推進派の業者からは「2つの市場はありえない」と釘を刺され、反対派からも「受け入れたわけではない」と反発を受けた。
選挙期間中に補償額が話題となれば、さらなる炎上の可能性もあっただろう。そんなリスクを全て選挙後にうっちゃったこのやり口、なんとも小池知事に都合のよい情報公開といわざるをえない。小池氏は“忖度政治”と自民党を批判している場合ではないのだ。