国内

豊洲移転補償金の情報公開 「小池ファースト」の都庁が忖度

補償金を受け取る企業の名がすべて黒塗りされていた

「情報公開は東京大改革の一丁目一番地」と主張してきた小池百合子・東京都知事。都議選でもそう訴えて都民ファーストの会は大躍進を遂げたが、公約の本気度に疑問符がつくような「のり弁」情報公開に記者は出くわした。(取材・文/広野真嗣)

 * * *
 都民ファーストの会は基本政策集の1枚目にこう記して都議選を戦った。

「“のり弁”をやめます————『黒塗り』の公文書を改め、徹底的に情報公開します」

 しかし、都議選からわずか2日後の7月4日、記者が手にしたのはまさに黒塗りだらけのA4 判2枚のリストだった。築地市場の豊洲への移転を延期したことによる損失について、補償を受けた業者の一覧(文書名は「補償金交付決定宛先等一覧」)である。

 小池知事が豊洲移転の延期を決めたのは昨年8月末。同年11月の移転を前提に建設した事務所や店舗、冷蔵・冷凍設備など豊洲への投資額は310億円に上っており、都は延期期間によって生じた価値の目減り分や移転を見据えた新規採用者の人件費など業者の損失に対する補償を始めている。

 今回の対象文書は、今年3月までの損失を対象に4、5月に支払われた初回分9億円分の内訳を記している。計52社に対して1社について最大で1億7900万円もの補償金が支出されていることは判る。

 公金を使って補償する以上、どの業者への補償額がいくらだったかについて公開しない理由はなさそうだが、東京都中央卸売市場の担当者は黒塗りしした理由をこう強調した。

「補償額によって業者ごとの市場への出資状況が第三者に明らかになる。業者の経営戦略にかかわる情報は明らかにできない」

 一見もっともらしくも聞こえるが、市場担当の部署に勤務する都庁職員が別の理由を明かす。

「築地の約500の水産仲卸業者の大半は豊洲移転に反対で、移転の前提となる安全対策を議論した5月の専門家会議では“こんなやり方はおかしい”と鬼のような形相で声を荒げていた。ところが補償金の話になると、急に反対派も表情が穏やかになる。反対して移転が遅れるほど補償金が増えるというおかしな構造になって、当人もバツが悪いのでしょうね、決定通知を店舗に持って来られるのを嫌がり、自分で取りに行くと言う人もいるそうです」

 都が補償を受けた業者名を明らかにすると、移転反対派を不用意に刺激しかねないというリスク管理から“黒塗り”にしたという見方だ。

 だが今回の情報公開がおかしいのは、文書の一部が黒塗りだっただけで済まない、明らかに、権力のご都合主義を示すものだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン