「窮状といっても、東芝の技術力が落ちたわけではなく、日本の優秀な人材が集まっているのは間違いない。いつ倒産するかわからないというリスクを東芝が抱えている今、自分と同じようなスキルを持った人材が一気に市場に放出され、競争にさらされる前に、自らいち早く飛び出すという手段は有効です。
それも、転職して他企業の文化に染まるのではなく、東芝で築いたノウハウ、スキルを利用して、最大限に活かす会社を立ち上げるのは、合理的な判断だと思います」
1960年代半ば、東芝は経営危機に陥るものの、“ミスター合理化”として知られる土光敏夫氏を経営者に招いたことで再生を果たした。土光氏はかつて、「これから期待される社員像は変化に挑戦し得る人だ」との名言を残した。
いまだ再生への道筋は見えない東芝だが、自らの足で歩み始めた元社員の中には、土光イズムを継承した“東芝魂”が確かに生きている。
※週刊ポスト2017年7月21・28日号