国内

ステージIIのがん患者 死なないための治療で死にたくなる

がんと共に生きる。ステージIIの女性の告白(写真/アフロ)

 年を重ねるにつれて、家族や親戚、友達ががんになったという話を聞く機会は増えていく。2人に1人が罹患する時代といわれて久しい。1979年生まれの今川敦子さん(仮名、38才)。独身。ドラッグストアで働いていた7年前、乳がん(ステージII)が見つかる。温存手術後、抗がん剤などによる化学療法、放射線治療、ホルモン治療を受け、経過良好。がんと診断されて、離職する人は約3割にのぼるが、今川さんは同じ会社で働き続けている。

 * * *
 がんになったら働き続けるイメージがなかったので、乳がんの疑いがあり、精密検査を受けると決まった時点で、会社に辞表を提出しました。けれど上司が、「まだがんだと決まったわけではないので、早まらないでくれ」と言ってくれたんです。その後、確定診断を受けたのですが、先生に仕事を辞めた方がいいのかと聞いたら「何を言ってるの?」って感じでした(笑い)。

「入院期間も5日間程度で短いし、あとは通院で治療できるから、仕事は続けてください」と言われ、上司も辞表を撤回してくれたんです。今思えば本当に、辞めなくってよかった。

 でも、治療を受けながら仕事を続けて、つらかったことはたくさん、たくさんありました。

 手術後、抗がん剤や放射線、ホルモン治療などを受けましたが、それはもう、人には説明できないほど、副作用で体調が悪くなりました。抗がん剤を投与した後は、だるくて、体が鉛を背負っているような感じです。ホルモン治療では女性ホルモンを止めるので、最初の2~3年くらいは更年期障害みたいな症状が出ます。集中力がなくなったり、普段できていることができなくなったりしました。

 今まで30分でできていた発注などの事務作業に、1時間かかってしまうんです。休日は遊びに行くどころか、近所のコンビニに行く元気もありませんでした。さらに、高額な治療費も悩みの種でした。

 治療がたくさんある月で、15万~16万円の治療費を支払うときもありました。気分転換に外食したくてもお金がなさすぎて、自分が作った味気ないお弁当を毎日食べるのもつらかった。遊んだり服を買ったりするお金もないし、脱毛してウイッグだし、人目を気にして外に出かけなくなるという悪循環です。

 これがずっと続くのかと思うと、なんか、人生楽しくないというか。生きるってこんなにつらいことなのかって、思いました。死なないために治療をしているのに、そのせいで死にたくなるんです…。

 また、アルバイトの子たちには、病状を伝えていなかったので、やる気がないと誤解されることもありました。

 今思えば、もうちょっと本当のことを言っておけばよかったと思います。トイレしか休める場所がないので休んでいると、「今川さんってトイレが長いよね」と言われることもありました。

 手術から7年。経過は良好で、3か月に1度の通院をしています。再発防止のためのホルモン治療は残り3年になりました。病気になり出世コースから外れてしまったという悔しい思いも正直ありますが、今では病気になったのだから仕方がないと割り切って、充実した日々を送っています。

※女性セブン2017年7月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト