「抗がん剤を服用できる患者の条件として『自力で通院できる』『食事ができる』など、全身状態が良好であることが求められます。これらを行なう体力がない場合、抗がん剤の副作用が薬効を上回り命を縮めます。
最後まで抗がん剤を使うことが最善の医療だと主張する医師も多いですが、患者は抗がん剤のデメリットを知って冷静に判断すべき」
投薬の量を減らすことが寿命延長に繋がると示唆する報告もある。マサチューセッツ総合病院のタメル医師らが10年に英医学誌『NEJM』に発表した報告によれば、早期の肺がん患者が「抗がん剤治療と緩和ケアを併用した治療」を受けたことで、中央値で11.6か月、最大で3年以上生存できたという。
「緩和ケアを行なったことにより抗がん剤投与の量を減らせたことが、寿命を延ばしたのではないかと推測されています」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)
他の治療薬と組み合わせると死亡リスクが増す抗がん剤もある。『米国医師会雑誌』(JAMA)に掲載された論文によれば、がんの増殖や転移に関与する部分のみを攻撃する分子標的薬の「ベバシズマブ」と他の薬を併用すると、患者の死亡リスクが高まった。
1万人を超す乳がん患者や肺がん患者を対象にしたこの調査では、他の薬のみを服用した患者と比べて、ベバシズマブを併用した患者が致死的な副作用で死亡するリスクが33%高くなった。とくに「タキサン系薬剤」や「プラチナ系薬剤」をベバシズマブと併用すると最もリスクが増加した。