さて、10話〜12話といった1クールの視聴率の推移は、初回で花火が打ちあがり、徐々に数字が落ちて行って、中だるみの時期を経て、最終話に向けての1〜2話でまたテレビの前に視聴者が集まってくる…というパターンだった。
が、このところ、初回はそれほどでもなかったのに、回を重ねる毎に視聴率を上げていく連続ドラマが目立っている。
この文脈で、いちばんに思い浮かぶのは、新垣結衣と星野源によるムズキュンシーンをこれでもかと段積みさせた『逃げるは恥だが役に立つ』(16年10月期・TBS系)だろう。すべての回で一度も数字を落とすことなく推移し、最終話で、ついに20%台の大台に乗せたのだ(ビデオリサーチ・関東地区)。
それには及ばなかったが、同枠で17年4月期に放送された波瑠主演『あなたのことはそれほど』も、最終話で一気に4.7ポイントも視聴率をアップさせた。
連ドラの宣伝用語には、中盤時期に改めて押す「中押し」、終了前にまた盛大に取り上げる「最終回押し」という言葉があるものの、徐々に数字を上げていくドラマは、宣伝部発進のPRというよりも、SNSを通じて視聴者が勝手に盛り上がってくれている効果のほうが大きいと言えよう。
実は、今クールは、初回よりも第2話の数字が高いドラマが多い。武井咲主演『黒革の手帖』(テレビ朝日系)は11.7%→12.3%、福士蒼汰主演『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)は8.2%→8.7%、東山紀之主演『刑事7人』(テレビ朝日系)は、1話から3話で0.9ポイントも上昇させ、“逃げ恥”“あなそれ”と同枠の渡辺直美主演『カンナさーん!』は、初回12.0%という高視聴率がネットニュースにもなったが、2話ではさらに0.6ポイント上昇させているのである。
そして第3話で12%台にのせたのが、高畑充希主演『過保護のカホコ』(日本テレビ系)である(すべてビデオリサーチ・関東地区)。
最大の要因としては、朝ドラの『ひよっこ』(NHK)で勃発した“島谷くんロス”の受け皿に『〜カホコ』がなったことが挙げられている。『ひよっこ』のヒロイン、みね子=有村架純が失恋した相手が島谷くん=竹内涼真。そして『〜カホコ』で高畑が思いを寄せる「麦野くん」役も竹内涼真なのである。「3話で数字がアップしたのは、F3(50才以上の女性)が見にきてくれたことが大きい」と同局の宣伝部も分析している。
「でも、AIカホコのお陰で、F1(20〜34才の女性)も増えたんです」と宣伝担当が目を輝かせる。あのLINEにおいて、QRコード、もしくは「友達追加」から「AIカホコ」を検索して「友達」になると、AIカホコが『過保護のカホコ』のキャラクターで返答し、ドラマで経験したことを元に会話が成長していくというものだ。