近年はテレビドラマで政財界の大物役を演じることが多い。
「大物といってもいろいろある。自分は大物だと思い込んでいる小物、大物だけど、らしく見せない謙虚な人、将来大物を期待される小物風大物──。大切なのは、その人物が上品か下品か、どんな性格か、どんな癖か、短所はどこか、長所はどこか。そういうことも含めて人物を構築していく必要がある。
『今後やってみたい役』というのはないね。やりたい共演者、脚本家、監督はたくさんいるんだがね。つまり、僕が田沼意次を稀代の悪党としてやってみたいと思っても、歴史的にはいろんな評価があるし、プロデューサーや脚本家、演出家がどういう意向で作品を創ろうとしているかが大事だから、僕の想いだけの問題ではなくなるんでね。
この年になって思うことは、明日はない、昨日も二度とない、只今のみ、ということ。過去も未来も、『今』この場を楽しむためにある。このインタビューにしても、過去をしゃべりながら『今』を楽しんでいる。『これまでの努力があったから、今こうして生きていられる。こんな話ができる楽しみは、今しかない』と思うことにしてるんだ」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
◆撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2017年8月11日号