やはり内乱の収拾は、『梅松論』で語られる人間尊氏の天下人たる大きさに委ねられることになる。必要になれば、気力や気概をみなぎらせる尊氏の集中力と気分転換力も本書から教えられる。

 擾乱後の恩賞充行はかなりの武士を満足させたのだから、尊氏もやればできたのである。著者は、無気力だった尊氏が四〇代半ばに積極的に性格を変えて、努力に結果を出したと語る。これは現代人にも勇気を与えるという著者の素直な見方と激励は、まことに好ましい。

※週刊ポスト2017年8月18・25日号

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