国内

脱法動画業者のおぞましい暴走を止めることはできないのか

暴走する脱法動画業者を止める方法はないのか

 海外のサーバーを利用することで、日本の法律で取り締まられることから逃げる脱法動画による被害が後を絶たない。この制作者たちは、多くの関心を集めるために、ネットで吹き荒れる排外主義に寄り添ったいびつな映像を、とても合法とは思えない手段で制作することまでしていた。ライターの森鷹久氏が「たかが動画」では済まされない、脱法動画業者によって起きている摩擦についてリポートする。

 * * *
 片言の日本語で、撮影の中止を懇願する”中国人留学生”とされる若い女性。女性の周りを、複数の男性が取り囲む光景は異様としか言いようがない。女性は、ギャラは半分でもいい、病気が怖いし赤ちゃんが産めなくなる……と現場責任者らしき男性に涙で訴えるが、要求は受け入れられない。結局、撮影は始まってしまう。映像の最後、ボロボロになった女性は男らに担ぎ上げられ、プールに投げ飛ばされる──。

 これは2013年、ネット上のアダルトサイトにアップされた、違法なAVのおぞましい内容だ。ビデオの紹介文には「中国人留学生が学費のためにAVの世界へ」「日中問題の格好のネタになりたくないのでヤバくなったら消す」「証拠隠滅の為に配信停止の可能性も」などと列記されており、ユーザーらによる「素晴らしい」「興奮する」「(ずうずうしい中国人への)仕返しは面白い」といった映像を高く評価する書き込みも確認できる。

 4年前のこの映像が、ネット上の中国人コミュニティで波紋を広げている。

「日本のAVは好きだが、これはあまりにもひどい。演技だったとしても、なぜこのような設定にする必要があるのか? 中国人がこれを見て、良い気分になるわけがない。どうかしている」

 筆者にこのビデオの存在を教えてくれたのは、幼少期に家族で日本に移り住み、現在は都内のIT会社に勤務する劉さん(33)。劉さんと筆者は、数年前にナイトクラブで知り合って以降、定期的に酒を飲んだり食事をする仲だ。筆者が既婚者であるにも関わらず、頻繁に合コンに誘ってくるなど高い社交性が彼の魅力だが”このようなビデオを見て森さんはどう思うか”と、珍しく憤慨していた。

 ちなみに、海外に設置したサーバーを用い、日本人向けに日本人女優の登場する無修正AVを配信する脱法サイトは複数あるが、これらのサイトは中国や韓国の男性たちからも多大な支持を得ている。中国系のサイトには、日本人向け脱法サイトで映像が配信されるや否や、即日コピー映像がアップされる。それを日本国内のユーザーが閲覧するなど、脱法が脱法を呼び込む巨大な闇空間が形成されているのだ。

 話を戻そう。劉さんだけでなく、多くの中国人が件の”映像”に憤慨しているというが、当然だろう。筆者も早送りでつまみ見したが、女性や外国人の人権を蹂躙しており、とても正視できるものではない。右派を自称する筆者にとっても、まさに日本の評判を貶めるような、特に受け入れがたい内容である。

「私は歴史問題にはそこまで興味がない。日本も悪いことをしたが、中国だって悪いことをした。大切なのはこれから。アジアは特に仲良くしなければならないのに、日本人はなぜこういうことをするのか、そして喜ぶ人がいることはとても悲しい」(劉さん)

 申し訳ない、と一言謝ればよかったのか。筆者には返す言葉もなかった。というのも、劉さんが教えてくれた動画以外にも、実は韓国人女性を対象にしたAVもネット上に出回っている。

 韓国国内にまでわざわざ出向いた日本人の撮影クルーが、韓国人女性を言葉巧みにホテルなどへ連れ込み、性的ないやがらせを行う、といった卑劣な内容だ。もちろん「演技だ」「仕込みであり、ヤラセだ」という意見もあろうし、そうかもしれない。ただ、激怒して部屋を出る女性をニタつきながら見送る日本人男性スタッフの表情を見ていると、これが演技であれなんであれ、なぜこのような映像が制作されねばならないか、全く理解できない。

 この映像にも「朝鮮人」「整形女」「貞操観念が低い韓国の女」といったコメントがつく。全く信じたくないが、実際に映像は制作され、それを見て喜ぶ日本人が存在する。

 このような非道なAVがなぜ制作されるのか。ネット上のAV業者が”何をやっても良い”とタカをくくっているからこそ起きた問題であることは間違いない。未成年者が出演する、口車に乗せられた女性が強制的に出演させられるといった問題が続出しているのも、業者の低い遵法意識とモラルの無さ、金さえ稼げれば良いという、極めて身勝手な歪んだ性質に起因するものであることは火を見るより明らかだ。その身勝手な考え方は、偏狭な排外主義まで商売道具にするおぞましさだ。

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン