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甲子園には確かに「文武両道の球児」もいる

野球も勉強も(写真:アフロ)

 甲子園は「プロ注目の選手」ばかりではない。ごく普通の高校生たちもプレーしている。野球と勉強に頑張る選手たちについて、現地からフリーライター・神田憲行氏がレポートする

 * * *
「昨日は自主練習で秘密特訓しました。内容? それは秘密ですから言えませんねえ」

 試合前の取材で、彦根東のショート1番の原晟也はそう言って報道陣を笑わせた。原晟也は陽気な性格で、すきあらば面白いことをいって報道陣を笑わせようとする。

「進路は大学進学で、志望校は横浜国立大学です。都会で一人暮らしして社会の荒波に揉まれてみたい。オリンピックもありますし」

 また笑わせた。

 彦根東は滋賀県屈指の公立進学校だ。原晟也の兄も彦根東高校野球部で、現役で京都大学に合格している。

 いまチームでいちばん成績が良いのは、レフトで3番を打つ高村真湖人。文系学年160人中16番という。

「志望大学は神戸大学経済学部。商社マンになりたいんですよ」

 彦根東は授業が始まる前の朝7時30分から、全校生徒が登校して教室や図書館で勉強する習慣がある。高村は始発電車に乗って、他の生徒より早い朝7時から学校で勉強している。

「30分でも積み重ねれば大きいと思って」

 そこまで勉強が出来る生徒がなぜ野球をやって甲子園でプレーしているのか。

「僕は甲子園に出たくて、東高に来たんですよ。東高が初めて甲子園に出たときに中学生で、真っ赤なアルプスで応援しました。そのとき、絶対ここに入って甲子園に出ると決めました」

 彦根東は今大会が二度目の出場。初出場は2013年、初戦で花巻東に敗れたものの、アルプスが赤いポロシャツを着た応援団で埋まり、甲子園を湧かせた。学校がある彦根城の城主・井伊家の武具「井伊の赤備え」にちなんだものである。

 中学生時代にそのアルプスで応援して、雰囲気に憧れて野球部に入学した生徒も多い。

 彦根東は初戦を勝ったものの、2回戦で青森山田に敗れた。

 4点差を追いかけた9回ツーアウトから三塁打を放った原晟也は、スタンドの拍手に合わせて頭でリズムを刻みながら三塁ベースからリードする。だが次打者のライナーを青森山田の三塁手が好捕したのを見て、天を仰いだ。

 試合後の原晟に聞いた。

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