◆他の人と付き合ってみたいという気持ちも
週末は共にクラブに通い、数か月がたった頃、告白された。「とりあえず、“お試し”でいいから、付き合ってみてよ!」と。
恋に夢中になっている友人が話すようなドキドキやトキメキは、正樹さんに対して感じていないような気がする。けれど、安心感はあるし、何より自分には、付き合うという経験が必要だと思った。思い切って正樹さんの手を握ると、ふっと身体が軽くなるような不思議な感覚を味わった。
正樹さんには30代の頃、長く付き合った彼女がいたのだという。同棲までしたが、キャリアウーマンでもあった彼女と結婚のタイミングがあわず、別れたということだった。「この歳だし、焦るのはみっともないけど、僕にも結婚願望があることは覚えておいてね」と、最初に言われた。
正樹さんは、レイカさんを様々な場所に連れていってくれた。聞く音楽の幅も広がったし、正樹さんが好きだというアウトドアも二人で楽しむようになった。キャンプをし、釣りをし、外で食べる食事の美味しさを知った。正樹さんは独り暮らしが長いこともあり、料理をはじめとする家事全般が得意だった。
とはいえ、“結婚”が頭をよぎることはなかったという。
「彼、聞いたらあまり貯金を持っていないようで、将来が不安かなあと。もう43だし、この先、何年も働けるわけじゃないから。あと、他の人とも付き合ってみたという気持ちがなかったといえば、嘘になります」
しかし、出会って1年がたった頃、二人は結婚した。きっかけはレイカさんの母親の病気だった。
「母にガンが見つかったんです。幸い初期だったので手術すれば大丈夫、と医者には言われましたが、不安でいっぱいで……。入院から手術まで、車の運転ができない私に代わって、彼が病院まで送ってくれたりと、すごく助けてくれました。母とも仲良くなって、いつのまにか、3人家族のようになっていた気がします」
母親の体調が回復した頃、二人は結婚式を挙げた。今は妊活に励む毎日だという。
「私はまだ若いけど、彼が歳なので(笑)、できるだけ早く、二人は欲しい。結婚したことで、家計を支えるためにも、仕事を頑張らなくちゃという気持ちも強くなりました。26歳まで待っていてよかったと、今は思っています」