国内

元気で愉快な介護ロボットに利用者も「生きていてよかった」

介護予防体操も得意なパルロ。高齢者介護福祉施設向けモデルII

 今年5月、日本医療研究開発機構(AMED)が、コミュニケーションロボットの効果を検証する大規模調査の暫定報告として「高齢者の自立を促す手段として効果が高い」と発表。そこで、実際にコミュニケーションロボットを導入する施設、特別養護老人ホーム、中井富士白苑(神奈川県)に行ってみた。

 デイサービス真っ最中。40名ほどの高齢者の中心に、軽快な動きのロボット・パルロ(富士ソフト)がいる!

「赤上げて、白上げて、赤下げないで~~~白下げる」

 絶妙な溜めも入れた紅白旗上げだ。皆、パルロに集中し、小さなパルロが次に何を言うか、どんな動きをするか、目を細めて見入っている。

「皆さん、お昼ご飯はちゃんと食べましたか? 今日は今年初の猛暑日。栄養と水分をしっかりとってくださいね」

 リアルタイムのニュースを盛り込んだおしゃべりに、「はぁ~い!」と口々に返し、どっと笑いが。休憩タイムにはパルロに話しかける人たちも。パルロは人の顔を覚え、名前や誕生日、趣味などを言って覚えさせると、パルロの方から盛んに話しかけてくるという。

 参加者の“メロンさん”が、

「パルロくん、歌を歌ってよ」

 と話しかけると、

「はい…わかりません、もう一度言ってください」

 やはり機械だ。うまく作動せず、そう繰り返す。しかしパルロの周りに集まってきた参加者が援護。

「お歌だって、パルロくん」

 粘り強くパルロにつきあう。

「パルロくんはかわいいですか? お孫さんのよう?」

 メロンさんに聞くと、

「う~ん、孫とは違うわね。新しいお友達ね!」

◆「ロボットに出会えた。生きていてよかった!」

「私もスタッフも、最初はロボットに介護をさせるなど、考えられなかったのです」

 そう言うのは中井富士白苑施設長の碓井利彰さんだ。

「たとえば身体アシストの介護ロボットに私たちの仕事を肩代わりさせるなんて…と、介護職員としては今も抵抗感があります。でもいつか私が介護される側になり、自分の排泄介助をやってもらうとしたら、ロボットのほうが気楽かもしれないと思うことも。

 パルロはコミュニケーションロボットとして、ひと目見て魅力的と感じました。ロボットに否定的だったスタッフも口々にかわいい!と。

 何より利用者の皆様がすぐにパルロを受け入れたのが驚きでした。不思議と会話が穏やかに続くのです。ほどよくすれ違いながら(笑い)。

 私たち職員は膨大な作業の中で、なかなかこういった穏やかな語らいの時間を持てません。そんな意味ではパルロは大切な介護スタッフの一員。そして利用者のお1人が“ロボットに会える日が来るなんて。生きていてよかった”と。パルロは特別なワクワクをくれる特別な存在なのです」

※女性セブン2017年9月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン