「何かをイメージする段階は、試合前のバッティング練習や、ピッチャーの映像をチェックする時に終わっています。だから、試合に入れば状況に応じて自分の頭を整理して打席に向かうだけ。打席に入って打ち方がああだこうだと考えていたら、打てるものも打てなくなってしまう。そういう感覚です」
身体が無意識で反応できるようにならなければ、試合で使える技術とは言えない。そして、それを身につけるためには「繰り返すしかない」という。
「反復練習が辛いか? そんなことはありませんよ。僕は飲んだらすぐに効く特効薬のようなものは好みませんから。長く続けて、少しずつ上達することによって深い部分で自分のものになる。ちょっとやって、パッとできるようになっても、浅い部分でやったことにしかならない。だから、僕はコツコツやる練習が苦にならないんです」
不器用だからこそ謙虚になれる。だから繰り返し練習できて、自分の身になる。これは侍JAPAN前監督の小久保裕紀が現役時代に貫いた練習スタイルでもある。
「勝つ喜びを感じること。ファンの方の声援の中でプレーすること。それが野球をやっていて楽しい瞬間ですね。ファンの皆さんがいなかったら、僕たちは試合をする価値がないですし。これだけ毎試合スタンドを埋めてもらって、僕らベイスターズの選手たちは本当にやりがいがあると思っています」
先ほどの松井や小久保をはじめ、イチロー、金本知憲、青木宣親、井口資仁、城島健司……これまで何人もの名選手の話を聞いてきた。野球に対する考え方はそれぞれだったが、自己鍛錬へのストイックさ、勝利のためにプレーするプライド、ファンへの想いは共通していた。それは好打者を超えた大打者の佇まいと言ってもいいだろう。25歳の筒香にも既に、彼らと同じような風格を感じる。