■会社を創ってはいけない
■勝負事をしてはいけない
この2か条は、「自分の力を過信するな」という戒めである。定年を機に一念発起して起業とはよく聞く話だ。
「老後の蓄えを増やすため、本格的に投資を始めたいと思っている。これまでは東証一部を中心に日本企業の株をちょこちょこと買っていたが、今後はFX(外国為替証拠金取引)にもチャレンジしたいと思っている」(神奈川県・66歳男性)
など、投資に積極的な高齢者も増えている。しかし、若い時と違って「失敗が許されない状況である」という現実を認めなければならないと郡山氏は強調する。
「自覚していなくても、70歳を過ぎれば体力、知力、決断力、すべてが全盛期と比べて著しく衰えている。ビジネスの成功には思い切りが必要だが、それは若い頃だからできること。
私の知人で定年退職して会社を作った人のほとんどは失敗している。私も退職後に起業し、何とか会社を潰さずにいますがピンチのほうが多かった。挽回する時間が多くない以上、大きなリスクを抱える行為には手を出すべきではありません」
「貯金を倍増しなければ老後の生活設計が危うくなる」と焦るのは分かるが、現在の蓄えを減らしてしまっては元も子もない。「やってはいけない10箇条」に通底するのは「足るを知る」という考え方だ。