話を「当たり役」に戻しましょう。かつては多くの女優が番宣時のインタビューで、「この役は私とそっくり」「自分のことだと思いました」と当たり役であることを自らアピールして、視聴者を引きつけようとしていました。
しかし、最近は「似ているところもあります」というレベルに留めるケースがほとんど。これはネットの普及で、「思ったよりも合っていない」「自分で言っているだけ」などのマイナスギャップを発信されやすくなったからです。
放送前からさまざまなコメントや報道が飛び交うなど、ドラマをめぐる状況がシビアになっているだけに、俳優自らが役の「合う、合わない」を口にするのはハイリスク、ローリターン。視聴者に受け入れられたとしても「そりゃそうでしょ」と言われる程度で、受け入れられなければ「ありえない」「ひどい」とバッサリ斬り捨てられてしまうのです。
そのため女優本人に語らせるのではなく、制作サイドが早い段階から「なぜ彼女をキャスティングしたのか」「彼女はいかに役作りの準備をしたか」などのコメントを発信するようになりました。「女優本人から押しつけられるのではなく、自ら得た情報で当たり役かどうかを判断したい」という視聴者心理を考えると、この流れは当然と言えるでしょう。
◆映画業界での揺るぎない評価