さて、遺失物法では保管に不相当な費用や手数がかかるものは政令で定めるところにより売却できるとされ、その政令では動物も含めています。ただ、同時に「逸走した家畜」を「準遺失物」と定義し、民法240条の定めを準用するとしています。そこで再び本則に戻り、公告後3か月経過するまでに飼い主が名乗り出なければ、迷い犬は拾得者のものとなります。
言い換えれば迷い犬を警察に届け出て公告された後、3か月経過するまで、迷い犬の所有権を取得することはできません。あなたは届出手続きをしなかったのですから、飼い主に返すしかありません。
落とし物をネコババすると遺失物横領の犯罪ですが、犬は飼い主に戻る習性があるので遺失物といえるか疑問になる場合もありそうです。もし、遺失物でない物、即ち他人の占有物を自分の物にすると窃盗になります。迷い犬の保護で罪に問われることはないでしょうが、飼い主とこじれると面倒になります。やはり、こういう場合は届け出るのが最善の方法です。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年9月22日号