国内

意識高い若者が「無給営業マン」に仕立て上げられるカラクリ

カフェでPCを広げ若者に新ビジネスを語るブラック経営者

 過酷な労働環境が社会問題化している。よく知られているのは、心身の限界を超える分量の仕事によって、ときに死亡者も出たブラック企業問題だ。近年では、過剰なノルマやシフト、報酬が支払われないなども問題を抱えたブラックバイト問題が浮上した。そして今年、大学生などを対象にしたインターンシップでも同様の問題が表沙汰になった。まだ世間に広く知られていないが、若者の意識の高さにつけこむ貪欲なブラック経営者によって、無給の営業マンが生み出されている実態を、ライターの森鷹久氏が追った。

 * * *
 岩手県内の農業法人が、インターンシップとして集めた女子大生二人にアルバイト業務をさせたにもかかわらず、賃金のほとんどを支払わなかったとして、労働基準監督署から是正勧告を受けた。

 大学生のインターンシップ参加は、外資系企業が東京大学や京都大学など特定の大学の学生を対象に始まったが、2000年代以降になると参加企業が増え、最近では、プレ就職活動のような位置づけにもなっている。大学3年生の夏にはインターンシップに参加するのが常識となりつつあるのだが、このインターンシップですらブラックな労働にすり替えられているというのだ。

 日本国内の企業が、東南アジアなどの新興国の若者を「研修」として呼び寄せ、極めて低い賃金の「労働力」としてこき使う例も知られているが、日本国内にはさらに非道な「ブラック経営者」が存在すると、現在は都内の会計事務所に勤務する佐野さん(仮名・28歳)は訴える。

「アメリカのビジネスだとか、高い意識がどうのとか、ありもしないこと並べ立てて……。ガラクタや出来損ないの果物を売っているだけのクソッタレ業者のクセに、俺たちの夢まで食い物にして……。許せません。外国人研修生など、違法に働かされている方々のニュースを見る度に思い出します」

 渋谷や新宿など、都内のターミナル駅前で果物を販売する若者達を見たことはないだろうか? お世辞にもきれいとは言えない出で立ちで、キャリーケースを引きながら道行く人々に「三個で千円」などといったバカ高いリンゴやミカンなどを売り歩く若者だ。彼らの実態については、一部メディアでも報じられ「やる気の搾取」などとも指摘されているが、佐野さんは彼らが”所属”する会社で果物売りや営業、最終的には経理担当も経験したという。

「無料求人誌に”日給一万円保証”や”即日払い”と謳って募集を出す。応募してきた人たちは、まず翌日や翌々日などできるだけ早い段階で”研修”を受けさせる。そこで8割、いや9割5分がいなくなる。残った人たちは…、ちょっと世の中のことを知らなさすぎるというか、被害者には変わりないのですが……」

 こういった求人に応募してくるのは、十中八九が金のない若者だ。出来るだけ早く現金が欲しい、そういった若者をターゲットにしているからこそ”一万円”や”即金”の文言が求人誌に並ぶ。9割5分がいなくなる研修とは、そこまで血も涙もない、きつくつらい研修なのか?

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン